4


「おい何してやがんだ」
「あ、す、すみません!」

 ひぃぃ、声が凄い苛立ってる!
 ギロリと睨まれ、俺は顔を引き攣らせながら謝る。すると大きな舌打ちをして俺に背を向けると歩いて行った。また歩くのか…。そろそろ座りたいぞ俺。
 そんな俺の願いも虚しく、座ることができたのは五分後だった。一部屋に行くまで五分かかるなんてどんだけだ。

「道は覚えたな?」
「あ、はい…」

 え、覚えてない…! なんて言える筈もなく。俺は小さく頷いた。そんな俺をジロリと睨めつけると、鼻を鳴らして嘲笑した。その様は流石美形なだけあって桁外れに格好いい。しかし…一々気の障ることをするのが玉に瑕かもしれない…。ちょっとしか時間を共有していない俺でもそう思う。

「じゃあ、取り敢えず文章読んでどう思ったか聞かせろ。まあテメェくらいの奴だったら一瞬で落ちるだろうな」

 俺は呆れて声も出なかった。
 そもそも俺は男であって、しかもこんな文で一瞬で落ちるとか言われること自体が意味不明だ。これがもっと可愛らしい文章だったらちょっと考えるけど。……いや、でもこの生徒会長が書いたと思うと気持ち悪いすぎる。

「…んだよその顔は。文句でもあんのか」

 俺に凄んで不機嫌を露にした生徒会長に冷や汗が流れる。 ぶんぶんと大きく首を横に振ると、それもこいつには不快だったようで、舌打ちを響かせると壁を蹴った。あ、足痛くないのかな…。蹴った際に発せられた音を聞きながら何故か俺は生徒会長の足の心配をしてしまった。

「で、どうなんだよ」
「あ、え、えっと…ちょっとこれはラブレターっぽくないというか…です、ね。もっとシンプルに書いた方が胸に響くというか…」
「あ? 何でだ」
「あー、その前にその相手の人とはもう仲がいいんですか?」
「……会ったら殴りかかってくる」

 …つまりあんまり仲が言いわけではなく、寧ろ少し嫌われている…ってことか。

「た、例えば、例えばなんですけど、生徒会長さんは良く知りもしない相手からこれだけ長く、想いを綴られた文章を貰ったらどう思いますか」
「はあ? んなのキモいだろ。破り捨てる」

破り捨てるんかい! 酷いな!

「想いが篭り過ぎるのは、却って迷惑になりがちなんです。取り敢えずシンプルに好きだ、で書き始めるといいんじゃないでしょうか?」

[ prev / next ]

しおりを挟む

4/30
[back]