▼ 告白
夕飯を食べた後。俺はテレビを観て笑っている郁人に視線を向ける。CMになったのを確認して声をかけた。
「あのさ、郁人。テレビ観てるところ悪いんだけど、ちょっと話が…」
「んー? 何、すぐ終わる話?」
「いや、多分結構かかると思う」
「分かった、ちょっと待って」
郁人はリモコンを手に取ると、ボタンを数回押したり選択肢を選んだりした後、テレビを消す。そして立ち上がると、俺に近寄ってきた。
「いいのか?」
「うん、録画してる。それで?」
ここじゃちょっと、と言おうとした時、俺の顔を見て察したのか、へらりと笑う。
「俺の部屋行こっか」
ああ、とほっとしながら頷く。郁人に続いてリビングを出て部屋に向かう。バタンとドアが閉まった音が響く。喉が渇く。話す内容を決めていたのに、緊張して口が開かない。郁人は俺が話し出すのを黙って見ている。
「あ、あの…」
俺は漸くそれだけ口にするが、それからの言葉が喉につっかえたように出てこない。静かな部屋に、居た堪れなくなった時だった。
「…もしかして、桜田さんのこと?」
ぽつりと郁人が呟く。疑問形ではあったが、確信めいた発言だった。俺は静かに頷く。そして、思い切って暴露した。
「お、俺、じっ実は優治先輩が好きなんだ!」
あまりに緊張しすぎて声が裏返った。郁人の顔を見る勇気がなくてぎゅっと目を瞑る。言った。言ってしまった。部屋は静かだが俺の心臓の音で煩い。郁人にまで聞こえているのではないかと不安になる。
引かれるだろうか。でも、引かれても、俺は…!
「ああ、うん。知ってるけど…」
引かれ……えっ?
「は!?」
今何て言ったこいつ!?
目をカッと見開いて郁人を見つめると、郁人はけろっとした顔で更に爆弾を落としてくる。
「桜田さんが兄ちゃんを好きなのも知ってるよ」
「はあ!?」
「告白されて断ったのも」
「はあああ!?」
あんぐりと口を開ける俺。「あ、これ言わない方が良かったかな?」郁人は口に手を当ててのんびりと言う。なんでそんなのんびりなんだ。っていうか、え? 何で知ってんの?
俺の疑問を感じ取ったのか、郁人が放し始めた。
「兄ちゃんが桜田さんを好きっていうのは、知ってたんじゃなくて憶測だったんだ。良かったよ、兄ちゃんが桜田さんを好きで」
「え、い、いや、良かったってお前…。…じゃあ、優治先輩の気持ちは?」
俺は混乱したまま疑問を投げつける。
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