告白

 夕飯を食べた後。俺はテレビを観て笑っている郁人に視線を向ける。CMになったのを確認して声をかけた。

「あのさ、郁人。テレビ観てるところ悪いんだけど、ちょっと話が…」
「んー? 何、すぐ終わる話?」
「いや、多分結構かかると思う」
「分かった、ちょっと待って」

 郁人はリモコンを手に取ると、ボタンを数回押したり選択肢を選んだりした後、テレビを消す。そして立ち上がると、俺に近寄ってきた。

「いいのか?」
「うん、録画してる。それで?」

 ここじゃちょっと、と言おうとした時、俺の顔を見て察したのか、へらりと笑う。

「俺の部屋行こっか」

 ああ、とほっとしながら頷く。郁人に続いてリビングを出て部屋に向かう。バタンとドアが閉まった音が響く。喉が渇く。話す内容を決めていたのに、緊張して口が開かない。郁人は俺が話し出すのを黙って見ている。

「あ、あの…」

 俺は漸くそれだけ口にするが、それからの言葉が喉につっかえたように出てこない。静かな部屋に、居た堪れなくなった時だった。

「…もしかして、桜田さんのこと?」

 ぽつりと郁人が呟く。疑問形ではあったが、確信めいた発言だった。俺は静かに頷く。そして、思い切って暴露した。

「お、俺、じっ実は優治先輩が好きなんだ!」

 あまりに緊張しすぎて声が裏返った。郁人の顔を見る勇気がなくてぎゅっと目を瞑る。言った。言ってしまった。部屋は静かだが俺の心臓の音で煩い。郁人にまで聞こえているのではないかと不安になる。
 引かれるだろうか。でも、引かれても、俺は…!

「ああ、うん。知ってるけど…」

 引かれ……えっ?

「は!?」

 今何て言ったこいつ!?
 目をカッと見開いて郁人を見つめると、郁人はけろっとした顔で更に爆弾を落としてくる。

「桜田さんが兄ちゃんを好きなのも知ってるよ」
「はあ!?」
「告白されて断ったのも」
「はあああ!?」

 あんぐりと口を開ける俺。「あ、これ言わない方が良かったかな?」郁人は口に手を当ててのんびりと言う。なんでそんなのんびりなんだ。っていうか、え? 何で知ってんの?
 俺の疑問を感じ取ったのか、郁人が放し始めた。

「兄ちゃんが桜田さんを好きっていうのは、知ってたんじゃなくて憶測だったんだ。良かったよ、兄ちゃんが桜田さんを好きで」
「え、い、いや、良かったってお前…。…じゃあ、優治先輩の気持ちは?」

 俺は混乱したまま疑問を投げつける。


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