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 空いてるベンチに座ると、俺は弁当を高野はビニール袋からお握りを取り出す。ピリピリと袋を開けながら、で、とこちらに目を向ける。

「どうしたんだ?」
「…ある人を傷つけた」
「それでその人が学校に来てないって?」
「……まあ」

 俺は気まずい気持ちを抑えるように白米を口に含む。

「大樹が傷つけるってあんま想像つかないな」
「俺だって人を傷つけることはたくさんある」

 俺は溜息を吐いた。そして、高野から訊かれる前に自ら口にする。

「…休んでいることは、実は確かじゃない」
「そうなのか?」

 自分に良い感情を持っていない奴から聞いたということを告げる。高野は、ううんと唸ってお握りを齧る。宙を見ながら咀嚼する様子は、考えているように見える。ごくりと飲み込むと、視線がこちらを向く。

「確かめてはないのか?」
「先輩だからちょっと行きにくいし、…いたらどうしようと思って」
「うーん」

 高野はちょっとだけ視線を彷徨わせた。言うか迷っているらしい高野に促す。

「何だ?」
「いや、その先輩って…もしかして会長なのかなと思って」

 ぎくりとする。俺は平静を務めて言った。

「何言ってるんだよ。優治先輩がそんなことで休むような人だと思うか?」
「ああ、それもそう…か? でも大樹限定でそうなりそうな気もする」


 

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