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「あ、え、えっと…あっ! せ、いと、会長さんの好きな方はどんな人なんですか?」
「あぁ!? んでテメェなんぞに教えないといけねぇんだよふざけんな」

 いやお前がふざけんな!

「ほ、ほら…俺が書く文章の内容も相手の性格で変わってきますし…!」
「あー…ッチ。仕方ねぇな。言っておくが好きになりやがったらテメェ殺すからな」
「だだだだ大丈夫です!」

 っていうかあの文章見る限り惹かれる要素何も思いつかなかったし惚れるとか論外すぎる!
 ぶんぶんと顔を振ると、生徒会長は俺から視線を外して話し出した。

「あいつは…直ぐに俺を殴る。そこがいい」

 え、何でいきなりM発言? っていうか殴るとか凄いパワフルな女子ですね!
 呆然としている俺を他所に、頬を染めながら想い人を思い浮かべているらしい生徒会長は俺を見ようともせず窓から見える桜を見つめた。……何このシリアスな雰囲気。俺の精神が爆発しそう。

「最初はガキのように喚き散らしたり、さり気なく暴言吐いてきたりしてきたのが凄ぇ腹立ってたんだがな。ウゼェウゼェと思ってたら殴られて…それで惚れた」

 何て超展開。っていうかだからその相手はどんだけだよ! 生徒会長も意味不明すぎるし!
 つか惚れた理由じゃなくてその人がどんな人なのかを訊いたたんだけどなあ、俺。

「あの…それで、その人は…」
「あー。あいつはだな、見た目は最悪だが、怖い物知らずな性格をしてて…あと、弄って構いたくなるくらいウブだ」

 益々どういう人物か分からなくなったんですけど。俺の脳内がゲシュタルト崩壊。
 生徒会長がそれ以上喋らなくなったので、俺はこっそりと溜息を吐いた。







 暫く無言で歩いていると、生徒会長の足が止まった。

「おい、着いたぞ」
「あ…はい……え?」

 下を向いていた顔を上げると、俺は目を点にした。
 何この豪邸。
 森(迷うから入るなと教師に忠告をされた所だ)を抜けた先には俺の家の十倍はありそうな建物が不自然に建っていた。学校にこんなところあったなんて初めて知ったぞ。つか、マジで金持ちなんだな。
 生徒会長は俺をチラリと見るとそのまま入っていく。俺も慌てて後に続いた。装飾が沢山施され、重そうなドアを開けた先には今にもメイドと執事が列に並んでお帰りなさいませご主人様と言いそうな(ちょっと憧れる)風景があった。やべぇ、ちょっと興奮してきた! こんなのテレビだけだと思ってたのに実際に入ることができるなんて!

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