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「大変だよなあ、大樹も」
高野がからかい混じりに言ってきた言葉に苦笑する。瞳はあの容姿だからモテるが俺に執着し、周りの男は眼中にないらしい。嬉しくないと言えば嘘になるが、俺は瞳とまた付き合うことは考えていない。妹のような存在だからもうどうやったってそういう対象に見られないのだ。
「どうしたらあんなに好きになれるんだ? 大樹、何か心当たりねえの?」
「ない。……あー、うん。な、ない」
「……あるんだな」
恐らく、好きになられたのも、執着されたのもあれが原因だろう。…瞳は同姓からよく思われないらしい。だから、まあ、何というか。嫌がらせをされていたというか。放課後、俺と瞳以外残っていなかった日だ。私物を隠されたとか言って、手伝ったのが始まり。あの時は友達を待ってて、暇だったし。目の前で探してるのに、何もしないのは流石に心が痛む。
瞳に下心を持って近づく男はわんさかいたため、瞳は男が嫌いだった。だから俺もクラスメイトだったが一言も喋ったことがなかったし、あの時も警戒されていた。途中で来た友達も巻き込み、見つけるまで探した後、良かったなと言って帰ったら次の日から瞳が話しかけてくるようになった。そして、少しして告白され、色々嫌がらせから守っている内に。
「ま、色々あったんだよ」
「そうか…」
瞳がそういう扱いを受けていたことを俺の口から勝手に言うわけにはいかない。言葉を濁すと、高野は察してくれたのか、それ以上追及はしてこなかった。
「ところで大樹、今日弁当?」
「ああ」
「あ、じゃあ売店寄っていいか?」
頷く。……京に、会いませんように。心の中でこっそり祈って、売店へと向かった。
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