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 歴史の授業は眠くなる。先生の声が何だか眠気を誘うというのもその要因だ。ふあ、と欠伸をした時だった。前から紙が飛んできた。小さく折りたたまれたルーズリーフの切れ端。俺はそれを広げてみる。

『今日昼飯二人で食べよう。その時話聞かせて』

 俺ははっとして顔を上げる。高野はちょっとだけ振り返っていて、視線が合った。高野の文字の下に急いで了解と書いて、高野に差し出した。高野は受け取らず、視線だけ落として俺の字を読むと、すぐに俺に目を合わせて、にっと笑った。
 高野の気遣いに少し心が軽くなって、俺はルーズリーフを折り畳んだ。












「え、何で?」

 昼飯は一緒に食えないと言うと、瞳が一瞬にして不機嫌になった。その隣で愛が呆れたように瞳を見る。

「別にいいじゃん一日くらい」
「でもこの前も一緒に食べられなかった。また邪魔が入るかもしれない」

 むっとする瞳。邪魔とはもしかしなくても優治先輩のことか。相変わらず優治先輩のことが気に入らないらしい。優治先輩は暫く…最悪今後二度と来ないと来ないから大丈夫だと言えるはずがなく、俺は苦笑でその言葉を流す。

「高野くんと一緒に食べるんでしょ? 何で私は駄目なの?」
「男同士でしか話せない話があるんだよ」

 高野が俺の肩に腕を回して爽やかに笑う。その爽やかさに絆される女子多数だが、瞳は絆されない少数派だ。ぎろりと高野を睨む。

「何それ。どんな話?」
「だから、男同士の」
「瞳」

 俺は溜息を吐いて瞳の肩に手を置く。瞳は高野から俺に視線を移す。

「ヒロくん」
「明日は絶対一緒に食べる。――邪魔が入っても」

 瞳を優先すると言うと、瞳はぱっと目を輝かせた。

「ほんとに?」
「ああ」
「……分かった」

 瞳の肩をぽんと叩いて苦笑すると、俺は高野に目を向けた。高野も苦笑している。じゃあ行くかと弁当を持って立ち上がると、愛が俺に近づいてこっそり呟いた。

「お疲れ」

 俺は小さく頷くと、教室を出た高野に続いた。

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