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「危ない人なら気を付けてね」
「ああ」
そう言いながら、ちょっと不安。前瞳が絡まれてた時、助けたのは俺ではなく優治先輩。俺に愛や瞳、他にも俺が親しくしている奴を守ることができるのだろうか。京は突拍子もないことをやるイメージがあるし、暴力的だ。もしものことがないわけではない。気を付けないとな。
「兄ちゃん?」
「ん、ああ、なんでもない」
俺は心配そうな郁人に笑いかけて、母さんが持ってきてくれた朝食に手を伸ばした。
学校へ着くと、背中に何かが飛びついてきて、俺は前のめりになった。首だけ振り向くと、瞳はにっこりと笑みを浮かべていた。
「ヒロくん、おはよう」
「おはよう。瞳、なんか機嫌良いな」
「ヒロくんに会えたから」
えへへ、と笑う瞳。いつも会ってるだろと思うが、まあ瞳が良いならいいや。触れないでおこう。
「ヒロくん」
瞳はじっと俺を見上げる。探るような目に何だか嫌な予感がした。
「あの女の人に何もされなかった?」
「あの女の人って…」
きっと、いや間違いなく真由ちゃんのことだろう。真由ちゃんのことを思い出すと、どうしても優治先輩のことまで思い出してしまう。苦い顔をしていたのか、瞳が勘違いをしてしまったらしい。
「何かされたの!?」
「い、いや。真由ちゃんには何もされてないって」
「……真由ちゃん、には?」
あ。瞳は目を細めて俺を睨む。優治先輩の名前を出すわけにもいかないので、知らない金持ちの人に、ちょっとな。と嘘を吐く。ほんとに? という疑いの眼だったが、ほら行くぞと俺が背中を押すと、俺の腕に自分の腕を絡ませ、にこにこと笑った。
「あ、そうだ! あのね、今日もクッキーを作って来たの」
「……え?」
あれ、待って。聞き間違い? 聞き間違いだよな? 聞き間違いであってくれ!
「ひ、瞳。今何て?」
「クッキー作って来たの!」
今すぐ帰りたくなった。
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