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兄ちゃんは桜田さんのこと、好きなのかな。だから…。頭の中で想像していると、桜田さんが静かに言った。
『大樹が気にしてんのは、家柄とか、そういうもんだと思ってる』
「あ、なるほど…」
確かに気にしそう。男同士なんて、大っぴらに言うこともできないしね。俺は気にしないけど、母さんは分かんないし。うん、母さんのこととか気にしてそう。
「桜田さんは…兄ちゃんのこと、諦めるとかは…」
『ねえな』
桜田さんが即答する。良かった。ほっとする。でも兄ちゃん結構変なとこで頑固だから、どうするんだろう。俺が言っても無駄だしなあ。ううんと考えていると、桜田さんが、ふ、と笑った気配がした。
『まあ、考えはある。そのためにちょっと時間が必要だ。大樹に会うことはできねえ。だからその間、何か、…なんでもいい。ほんのちょっとでも違和感があったら俺様に連絡しろ』
「あ、はい。分かりました」
『ああ、それと、京って奴に気を付けろ』
初めて聞く名前に首を傾げる。頭の中では和風の女の子がこっちに笑いかけている。
「みやこ…? 女性の方ですか?」
『いいや、男。話が通じないことが多い奴』
話が通じない…。良く分かんないけど、面倒そうな人だ。
「はあ、…分かりました。京さんですね」
『頼む』
それから一言二言話して、通話を終了する。考えって、なんだろう。あと、京さんって。兄ちゃんに敵意を持ってる人なのかな。嫌だな、それは。全人類に好かれる人なんて存在しないけど、兄ちゃんが嫌われるのは想像したくない。とりあえず気をつけたいけど俺じゃ無理だよなあ。兄ちゃんの友達に気を付けてもらうのが一番いいか。
俺はごろりとベッドに横になる。……あれ、そういえば。兄ちゃんが気にしてるのは家柄、とか言ってたけど。告白してフラれたのにそう言えるってことは、もしかして兄ちゃんの気持ちに気付いてる? ……うーん、良く分からない。俺は考えることを止めて、可愛い可愛い亜矢子ちゃんの写メを開いた。
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