お見合いパーティー

 あっという間にその日はやってきた。――今日はお見合いパーティーだ。俺はスーツを着て、そわそわと部屋を歩き回っていた。動いていないと緊張でどうにかなりそうだ。俺は時間を確認した。さっきから針が動いていない気がする。もしかして壊れているんじゃないかと一瞬思ったが、動いていないと思ってしまうのは、おそらく俺がさっきから何度も時計を見ているからだ。

「変なところねえかな…」

 俺は何度目かの服装チェックをした。姿見に映る俺は、なんだかいつもより大人っぽい。

「兄ちゃん」

 こんこん、というノックの後に聞こえた声。俺は入っていいぞと声をかけた。ドアが開いて、郁人が顔を出した。

「兄ちゃん、母さんが朝ごはん食べないのかって言ってるけど」
「ああ…今から行く」
「うん。……へえ、なかなかいいじゃん」
「そうか?」

 少し照れくさくなって頬を掻くと、郁人はにっこり笑った。にこにこしながら見てくる郁人へと近づき、一緒に一階へ下りた。
















「遅かったわね。何をしていたの?」
「えーと、変なところないか確認とか、いろいろ?」

 テーブルにお茶碗などを置いていきながら、母さんはふうんと言った。全く興味なさそうな声だ。

「いただきまーす」
「いただきます」

 お茶碗を手に取った郁人は、箸をぴたりと止めて、そういえば、と口にした。

「兄ちゃん、今日パーティーなんだよね。…いいなあ、豪華な食事とか出るんだろうなぁ…」

 うっとりとした顔で宙を見つめる郁人に苦笑する。郁人たちにはお見合いじゃなくて、普通にパーティーに招待されたと伝えている。先輩のお見合いを見に行くなんて、おかしいからな。まあパーティーだし、嘘は言っていない。

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