2

「特別に教えたる。俺たちは別の世界の人間や。――ああ、チェシャは人間やあらへんけど」
「別の世界って、……マジで不思議の国のアリスかよ」
「不思議の国? …ちゅーかアリスって、なんや、俺たちのこと知っとんのか」
「俺たちの知るアリスは本だけどな」

 へえ、俺たちのことが本に載ってるんか。興味あるな、どんな風に書かれてるのか。その本は完結してるんやろか? 俺たちの結末も――そうなるとしたら、その作者は何モンや。

「…信じらんねえ。じゃああの耳や尻尾は本物っつーことかよ?」
「この世界にはチェシャみたいな種族はおらへんのか?」
「いねーよ、想像上の生き物だ」

 流石、人間界やな。人間しかおらんのか。
 会長さんはチェシャをじろじろと見る。視線に気付いたチェシャがふてぶてしい笑みで手を振る。会長さんは顔を逸らして、微妙な顔をした。

「…なるほどな」
「なんや?」
「……チェシャ猫だな、と納得しただけだ」

 会長さんはそう言って、溜息を吐いた。

「…で、あいつが帽子屋だな。お前は……」
「ハートのトランプや。トランプでええよ」
「じゃあトランプ、お前その腰についてるもんどうにかしろ」
「は、この剣か?」
「ここでは銃刀法っつーのがあるんだよ。銃やそういう刃物は所持してたらいけねーんだ。特別に許可されたやつ以外はな」
「ええ? 面倒な法やなあ。…ちゅーことは、帽子屋さんも違反しとるやないか」
「…まさか」

 あの人、銃何丁も持っとるで、と言うと、会長さんは頭を抱えた。

[ prev / next ]

しおりを挟む
[back]