正体を明かす時(例外のない規則はない)

(side:ハートのトランプ)





「で、なんや?」
「…お前らは、どこから来たんだ」
「それ聞いてどうするんや?」

 チェシャに会長と呼ばれていた男をじっと見る。…目の隈、凄いな。疲れてるんやろか? まあ俺には関係ないんやけどな。
 会長さんは重々しく口を開いた。

「…この学園は御曹司が通うから簡単には入れねえんだよ。だからどうやって入ってきたのか知りたい」
「はあ」

 学園ってここのことか? 何言うとるんかわからんが、とりあえずここは入りにくいい場所っちゅーことやろ? 女王の城みたいな。

「つーのは建前で」
「はあ?」
「…てめぇら、怪しいんだよ。あいつも突然現れやがるし…」

 あいつ、と言った時にちらりとチェシャたちの方を見る。そのあいつは、帽子屋さんのことやろか? それとも…。

「なぁ会長さん。先に俺から質問していいやろか?」
「……なんだよ」

 不機嫌そうな顔で俺をギロリと睨む。中々鋭い目やけど、帽子屋さんたちに比べたら全然やな。

「アンタは俺たちの――チェシャの敵か?」

 会長さんは驚いたように目を見開く。しかしすぐにぐっと顰めっ面になる。これは……肯定っちゅーことか?

「…わからねえ」
「は」
「敵に見えるなら敵だし、敵に見えねえなら違うだろ」
「曖昧やなあ」

 まあ、敵意をもっているようには見えへんから、とりあえずこれは保留でいいか。ただ、敵か味方か分からんやつは危険やから、警戒だけはしとくか。

「で、お前らは何モンなんだよ?」
「…これ、言っていいんかなあ…。ιはなんも言ってへんかったし、いいよな。俺ら、ワンダーランドっちゅーところから来てん」
「……ワンダーランド?」

 会長さんは訝しげに呟いた。

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