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「宿もιが用意してくれたんや」
「へえ…」

 会長さんは僕たちを険しい顔でずっと見ている。特に視線はハートのトランプの……体、というより腰かな? あの立派な剣から視線を外さない。どうしたんだろう?

「おい、お前」

 重々しく口を開いた会長さん。ハートのトランプは俺か? と自分を指差す。それに頷き、顎をくい、と動かした。

「ちょっとこっち来い」
「……は?」

 ハートのトランプは顔を歪め、僕を見る。会長さんはそんなに危険じゃないと思うし、何かあってもハートのトランプは強いから大丈夫でしょ。僕はうんと頷いた。それに応えるようにハートのトランプも頷いて、会長さんに向き直る。

「ま、俺も訊きたいことあったしちょうどええわ」

 そう言って会長さんについていくハートのトランプを見送った。

「ねえ、さっきの話はほんとなのかな?」
「アァ? だからこの俺がわざわざこんなクソつまらねえ場所にいんだろ」
「そうだったね」

 僕が訊きたいのはそのιの話は信用できるのかってことだったけど、まあいいか。

「…いっそのこと、ここで暮らすかよ、チェシャ?」
「ヤだね。…帽子屋一人で住めばいいんじゃない?」
「誰がこんなクソな場所に住むか」
「言ってることおかしいよ」

 呆れた顔でイカレ帽子屋を見ると、つまらなそうな顔で煙草を吸っている。うえ、煙草嫌いなんだよねえ、僕。顔を歪めると、帽子屋はにやりとあくどい顔で笑った。……絶対確信犯だねこれは。

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