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僕がむっとしているのに気付いたイカレ帽子屋の目が冷めているのに気付いた。アリスのことを考えているのが分かったんだろう。イカレ帽子屋はアリスのことをよく思っていないから。アリス、あんなに可愛いのにな。…まあ、分からなくもないんだけどね。アリスは部外者だから。僕も最初は警戒してたけど、すぐにアリスが危険じゃないって分かった。ワンダーランドの誰より控えめで、でもいいリアクションするから気に入っている。
ところで。
「会長さん、仕事はいいの?」
昨日、仕事がたくさんあると言っていた。しかも、隈はまだくっきりと残っている。首を傾げて訊ねると、会長さんの顔が強ばった。
「……そこの不審者がいると連絡が入ってな」
不審者――帽子屋のことか。…不審者、って。ぷっと笑いが零れる。イカレ帽子屋の顔が不愉快そうに歪んだから、尚更おかしかった。
「ブチ殺すぞ人間」
会長さんの目が細まる。空気はぴりぴりとしているけど、まだキレてはないから止めなくて大丈夫かな。でも、一応帽子屋を咎めるように見ると、イカレ帽子屋は大袈裟に肩を竦めた。
「…ッチ、ここだと好き勝手できねーからクソつまんねえな」
懐に入れた手で銃を触っているんだろうな。暴れたりないんだろうけど、ここで暴れたら自由を奪われる、ってYに言われたからね。なんとしても止めないと。このイカレ野郎を捕まえても被害者が増えるだけだ。
「なァクソネコ。早く帰ろうぜ」
「そう言われてもねえ…。僕、まだ帰れないらしいけど?」
というか、イカレ帽子屋はどうやってここに来たんだろう。これもYのミス?
「帰る…?」
会長さんが訝しげに呟く。あー…と、正体ってバラしちゃまずいんだっけ? Yはなんて言ってたかな。あんまり覚えてないや。
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