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「凄く疲れてるみたいだね」
「テメェに関係ねえだろ」
「そうだね、でも誰がここまで苦労して運んだと思ってるの?」
目の前で倒れられて、非常に迷惑だったんだけど。そう付け加えると、苦虫を潰したような顔をして僕から視線を外した。そういう反応は僕を喜ばせるだけだよ、会長さん。
「……ッチ」
舌打ちをすると、嫌そうに眉を顰める。
「……仕事だよ」
「仕事? …えーと、何の?」
首を傾げると、会長さんは面食らったような顔をした。
「何って…お前、俺が誰か分かってる?」
「うん。会長さんでしょ?」
「…なら分かれよ。生徒会の仕事だ」
「ふーん…。そんなに多かったの?」
「まぁ…。当然の報いではあるけどな」
自嘲する会長さんに好奇心が湧き上がる。面白そうな話だ。
僕は先を促す。会長さんは先程より更に嫌そうな顔をした。
「もういいだろ」
「えー。気になるんだけどな」
にんまりと笑って首を小さく傾げる。予想通り、嫌悪に顔を歪める会長さんに今度は声を出して笑った。
「…うぜぇ」
「ほら、人に話すと色々楽になるよ?」
「お前は面白がってるだけだろ」
「…まあそうだけど。じゃあカズマに倒れたってこと教えてもいい?」
好きな人に格好悪い姿を見られたくはないんじゃないかな。
はっとした表情で僕を見ると、長い溜息を吐いてがしがしと両手で髪を掻き混ぜ始めた。僕は黙ってその様子を見守る。
「…カズマには言うな」
「教えてくれたら言わないよ」
ホントだな、と言うような視線で睨まれ、僕は頷く。
「……俺たちがカズマに惚れてるってのは知ってるだろ」
「うん」
「俺たちはカズマに構うことに必死で仕事を溜めまくってたんだよ。それを一人でずっとやってた。それだけだ」
なんだ、それだけか。興味が無くなりそうになったところで、ふと疑問が浮かぶ。役員っていうのは何人もいるって聞いたけど、一人でやってたっていうのはどういうことだろう?
「――あれ? 他の人は?」
「あいつらは……まだカズマに構いっきりで全然やろうとしねえ。このままじゃリコールされるってのに」
リコール。その言葉に僕はぐっと手を握る。嫌な言葉だ。できればもう二度と聞きたくなかった言葉でもある。上手く笑えてなかったのか、会長さんが訝しげに僕を見る。慌てて笑みを貼り付けたけど、不信感は取り除けなかった。
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