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「い、イチャイチャってなぁ…!」

 俺はこんな奴嫌いだ! 真っ赤になって否定するりゅーいちくんに僕はへにゃりと眉を下げる。するとピシリと固まって僕の顔を凝視した。

「そっか…。僕はりゅーいちくんが好きなんだけどな」
「なっ…!? ななな、なに言って…」

 わたわたと慌て始めた様子にほくそ笑みながらしょんぼりしたままでいると、僕の肩にするりと腕が回った。チラリと横目で確認するとレンだった。切ないような笑みを浮かべながら僕に顔を寄せる。でも一瞬面白そうな顔をしたから、僕の演技に付き合ってくれているんだろう。付き合うっていうか、自分がしたいだけだろうけど。

「なあ、チェシャ。百緒なんか止めて俺のところへ来いよ…。大事にするぜ?」
「レン…」

 じっと見つめ合って徐々に顔を近づけていくと、もう少しで唇が重なるというところでりゅーいちくんの息を飲む音が聞こえた。そして僕とレンの間ににゅっと腕が入り、勢い良く引き離される。

「ひ、人前でんな気色悪いもん、みっ見せんじゃねーよ!」

 真っ赤な顔で睨まれても全然怖くないよ。しかも噛んでるし。

「気色悪いって酷いなお前。じゃあ二人きりになるところに行くか?」
「うーん…」

 別に二人きりになる必要なんてないと思うんだけどな。だって、りゅーいちくんは引き止めないだろうし。りゅーいちくんを揶揄うという目的が果たせない。
 ていうかレンと二人になるのは勘弁だ。
 迷っていると、レンがぐいぐいと僕の右腕を引っ張る。ちょっと、何さそのニヤニヤ顔。僕が嫌がってるのを感じ取ってる癖に、やっぱり性格悪いよね。いや、僕も人のことは言えないんだけどさ。……さて、どうしようかな。
 ずるずると微妙に引き摺られていると、左腕を誰かに掴まれる。誰かって、まあ、りゅーいちくんしかこの場にはいないんだけど。

「どうかした、りゅーいちくん?」
「え、……あ、」

 どうやら無意識の内に掴んだようで、呆然として腕を見つめているりゅーいちくん。僕は首を傾げた。

「ッチ、来い!」
「え」

 ぐいっと強く手を引かれ、するりとレンの手が放される。何も言わないレンが気になって後ろを見ると、レンが笑みを浮かべてじっとこっちを見ていた。…あの笑み、完全に面白がってるな。僕もレンの立場だったらそんな笑み浮かべてるけど、えっと、一体何なのこの状況?
 予想外の展開に、僕は柄にもなく、少しだけ緊張した。

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