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 僕の顔が怖かったのか、少し青褪めて顔が強張った。ふっと顔に笑みを貼り付ける。

「ゴメンね」
「は……?」
「やっぱりカズマのこと、自分でどうにかしてよ。元々りゅーいちくんも乗り気じゃなかったでしょ?」
「何言って…」
「じゃあ」

 にっこりと笑みを浮かべると、りゅーいちくんは変な顔をした。それを不思議に思いながら背を向ける。溜息を吐きそうになるのを抑えながら歩き始めると、腕を掴まれた。そして後ろから焦ったような声が聞こえる。

「待てよ! お前こそ、意味わかんねえ! 変な顔浮かべやがって、俺だって気になるんだよ!」
「は……?」

 変な顔? 何を言ってるんだ、りゅーいちくん。僕が笑えていなかったっていうのか。振り返ると、りゅーいちくんは一度俯いて顔を上げた。

「そうだよ、お前の言ったとおりだ。カズマは俺がいなくても何も言わねえから…俺なんか必要ないのかもしれないって思った。教室にも俺の居場所はねえ」

捲し立て、僕は目を丸くした。声は段々小さくなっている上に、どこかしょんぼりとした顔をしている。えーと、それって。

「…要するに、寂しかったってこと?」
「っ、う、うっせえよ! 悪ぃか!」

 顔を赤くして僕を睨むりゅーいちくんに笑いが漏れた。すると、馬鹿にしてると思ったのか、更に顔を赤くして何かを叫んでいる。
 やっぱりりゅーいちくんって、ヤマネに似てる。だけど、ヤマネよりちょっとだけ素直なのかな。

「わ、笑ってんじゃねえ!」
「馬鹿にしてるわけじゃないよ。可愛いなって思ってさ」
「馬鹿にしてんじゃねえか!」
「まあまあ、落ち着いて。えーっとさ、皆と仲良くしたいなら言えば良いと思うよ。カズマに構って欲しいなら言えばいい。言いたいことはちゃんと言った方が良いよ」
「……お前だって、言ってないだろ」
「…僕は、こんな性格だからね」

 何百年、自分の歳も分からないくらい生きていれば、性格だって捻くれてくると思う。そりゃあ例外だってあるけど。それに僕はこれで満足しているから言う必要なんてないと思っている。だけど、りゅーいちくんは違うでしょ。

「…い、一応礼は言っておく。……サンキュ」
「うん」

 にこりと笑うと、眉を顰めて顔を逸らされた。お、照れてる。笑みを深くしてそれを見ていると、直ぐ後ろから声を掛けられた。

「うっわー、妬けちゃうな」

 ずしりと肩に重みが加わり、僕は顔だけを向ける。

「何してるの、レン」
「散歩してたらチェシャが見えたから。俺という者がありながら百緒とイチャイチャすんなよなー」
「ぶっ!? て、てめぇ何言ってんだ!」

 りゅーいちくんって直ぐに反応するから楽しいよね。

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