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 僕はYから視線を外して周りを見渡す。ここから少し離れた所で料理を持ち、困惑した表情をしている男の人がいて、僕は目を瞬く。あれ、もしかして僕たちのかな?
 何だか言い合っているカズマたちの隙間からこっそり手を振ってみると、驚いたように目を見開いた。にこりと微笑んでみると、慌ててこっちへと来た。

「も、申し訳ありません!」
「いえいえ、どうも」

 注文を確認しながら並べられる料理を見つめる。いい匂いが漂ってきて自然と顔が弛む。肉じゃがも刺身も凄く美味しそうだ。いただきますと手を合わせているモトヤに習って僕も手を合わせる。……いただきます、って確か食べる時に言うんだよね。さっき教えてもらった。
 刺身を一つ口に含む。

「あー! 何で先に食べてんだよ!」

 まだ言っているのか。思わず呆れた表情になるのをぐっと抑えて、黙々とお箸を進めた。
 ふとモトヤを見ると、頬を膨らませているカズマを不機嫌な顔で睨んでいた。…うーん、ていうかカズマは何で僕に執着するんだろう? こんなに回りにいるのにさ。

「ほら、もう行きましょう」

 優しげに笑んでいる男がカズマの背中を軽く叩いて宥めている。その横で茶髪の男が賛同しているのを僕は横目で見た。えーと…確か優しそうな男がフクカイチョウさんで、茶髪の男がショキさんなんだっけ? カズマが言うには。


「……むー、今度は絶対一緒に食べような!」
「うん、そうだね」

 残念そうにしているカズマに笑んで軽く手を振る。それが嬉しかったのか、ニカッと歯を見せて笑った後フクカイチョウさんとショキさんを連れて離れて行った。あれ、りゅーいちくんは? と思って横を見ると、モトヤと睨み合っていた。……え、何してるんだろう。

「あのさ、りゅーいちくん。カズマたち行っちゃったけどいいの?」
「……え、っあ!」

驚いたように目を見開いて舌打ちすると、僕を一瞥してカズマたちの後を追うりゅーいちくんの姿を見送った。

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