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 横にはりゅーいちくんがいて、ジロリと僕を睨んでいる。

「おい、聞いてるのかよ!」
「あー、うん、聞いてるけどさ。カズマ一体どこで食べるって言うの?」

 まさか、床とか? そう言って嗤うと、カズマの顔(見えている部分)が真っ赤になる。

「なんだよそれ! そんなこと言ったら駄目だぞ!」
「そんなことって? 別に僕悪いこと言った覚えはないんだけど」
「だって床でって…!」
「床で食べろとは言ってないよね。それにほら、周りを見てみなよ。ここら辺で空いてる席はあるの? キミだけじゃなくて、りゅーいちくんも座れる席」

 ねえ、とりゅーいちくんに同意を求めて笑うと、自分の名前を呼ばれるとは思ってなかったのかポカンと間抜けな顔をして突っ立っている。あー、やっぱりヤマネに似てるなあ。うん、何だか会いたくなってきた。無理だけど。
 次に会えたらいつもより揶揄おうと未来のことを考えながら頬杖を付く。……ところで、りゅーいちくんはいつまで黙っているつもりなんだろう?

「おい、隆一!?」
「…っ、あ…? あ、ああ。何だ」
「あー、りゅーいちくんお腹空いてるんじゃない? ほら、僕のことなんかより早く空いてる席探してあげなよ」
「そうなのか!? ごめんな、隆一!」
「…いや…」

 何だ、人が折角二人で食べれるようにしたのに、意外に歯切れの悪い返事をするんだな。じいっと見ていると、カズマに向けていた視線が急にこっちに向けられる。目が合うと眉を顰めて直ぐに逸らされたけど。そんな様子に笑みを漏らしていると、袖を引っ張られた。手を辿っていくとモトヤが拗ねたような顔で僕を見ている。

「どうしたの、モトヤ?」
「…むー」

 もしかして僕がカズマたちと話していたから構ってもらえなくて拗ねたのだろうか。あー、可愛いな。僕はニヤついているのを引っ込めてにっこり微笑む。そして頭に手を滑らせて青い髪を撫でた。満足そうに笑むモトヤ。周りは何だかきゃあきゃあ言っている。……うん、凄い声だよね。どこから出しているんだろう。

「あー! ズルイ! 撫でさせてやるから俺も撫でろよー!」

 え、まだいたんだカズマ…。っていうか何で上から目線? いや、上から目線で命令されるのはワンダーランドからだから慣れているんだけどさ。それより、りゅーいちくんは何をやっているわけ? 早くしないと他の人たち来ちゃうと思うんだけど。

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