再び食堂へ(一筋縄で行かぬ)

「よォ」
「……わ、…ヤオト」

 あれから、勉強をするわけでもなくただ普通に喋っていただけの僕は、ある一人がお昼休みだと言って驚いた。本当に何もしてないんだけど、ガッコーとしてこれ…いいのかな? 先生らしき人は数回来たけど、僕を訝しく一瞥しただけで去っていった。授業があるものだと聞いていた僕は何だか少しがっかりした。
 お昼休みになったってことで、食堂にでもモトヤに案内してもらおうした僕は、Yが教室内に入ってきたことに目を瞬く。…そっか、監視役だものね。ニヤニヤとしたYが挨拶しながら手を上げる。Yと言おうとして、言い直す。隣の席(このクラスは席とかは決まっていないらしく、皆好きに座っている。モトヤも僕も然りだ)のモトヤは威嚇するようにYを睨んだ。Yはおや、と意外そうに笑った。

「へェ、もう手懐けたんだなァ」
「…おま、え…誰」
「さァなぁ。お前の隣の奴と親しい仲とでも言っとくかァ」
「……むか」

 モトヤが小さく呟いて、より睨みを強くした。Yと僕が親しい仲…ねぇ。面白そうに揶揄うYにモトヤは気づいていないようだ。

「やめなよ、ヤオト」

 呆れながら言って立ち上がると、モトヤも立ち上がる。

「それで、何の用かな?」
「分かってんだろォ?」

 ニヤリと笑ったYは、次いで言った。

「食堂行くぜェ」

 何となくそんな気はしたけど、確信は持てなかったから言わなかったのをYは気づいていた上での発言だろう。見当違いのこと言って笑われたくないしね。僕は頷く。そして歩きだそうと足を踏み出したところでモトヤに腕を掴まれた。

「……や、」
「モトヤも行く?」
「…ん。でも、や」

 Yを見て嫌々と首を振る。どうやらYが苦手なようだ。まあ僕が初めての友達ってくらいだから僕以外の人を簡単に受け入れられないんだろうけど。さて、どうしようかな。というかどっちも引きそうにないし、モトヤに我慢してもらうしか選択肢は存在しないか。「モト――」

「ほら、行くぞ」

 僕が名前を告げようとしたところでそれをYが遮った。そのまま僕の腕を引っ張る。体制を慌てて整えて、そのまま付いていく。

「まっ……、ねこ!」

 後ろを振り返るとモトヤは泣きそうな顔で後を付いてきていた。…うん、犬みたいで可愛いなあ。




[ prev / next ]

しおりを挟む
[back]