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「っつーことで自習だ」
「よっしゃ、じしゅー!」
「じしゅーだーい!」
「はらへったー!」

 最後に叫んだ人はどうやら自習なんてどうでもいいらしい。ていうかまだ朝だよ。

「つか、チェシャの質問コーナーにしようぜ」
「おー、いいなそれ。けってーい」
「軽っ!?」

 ヤカタニはニヤリと厭らしい笑みを浮かべて、教卓に座った。流れるような動作で脚を組む。

「じゃあ俺から質問なー。何で猫耳と尻尾つけてんだ?」
「家庭の事情だよ」
「どんな家庭!?」

 さっきからやたら突っ込んでくるのは、可愛らしい感じの少年だった。子犬みたいで…うん、可愛い。

「次俺な。好きなものは?」
「魚と面白いものかな」
「げっ、魚! すげえな、俺魚食べれねえよ。骨とかうぜーし」

 ケイタは吐き捨てるように言った後、キラキラとした瞳を僕に向けた。まあ僕猫だからね。魚が好きってのはもう決定事項のようなものだ。

「面白いものってのは?」
「んー、まあ、アレとか」

 そう言って指差すのは赤い額をさすっているりゅーいちくんだ。ああ、と納得が言ったように皆は頷いた。知らぬは本人だけってね。ワンテンポ遅れて眉を顰めてこっちを見ながら首を傾げているりゅーいちくんにさっきの僕の言葉を教える人はいなかった。

「じゃ、次」
「はいはーい!」
「よし松林」
「いや俺松村なんだけど」
「早くしろ森川ー」
「森川って誰!?」

 さっきから突っ込みが炸裂してるこの可愛い感じの子はマツムラと言うらしい。マツムラは少し溜息を吐いて僕を見た。

「そうだなー、じゃあチェシャは」
「チェシャって好きな奴とかいんの?」
「っておい! 俺今喋ってたんだけど!?」
「好きな人はいないよ」
「ふーん、そっか」
「何これ苛め? 俺苛め?」

 何だかこのクラスって凄いフリーダムだ。他のクラスを知らないからこれがクラスっていうものの姿なのか分からないけど。
 好きな人の質問が出たとき、窓の外を見ていたりゅーいちくんの肩が少し動いた気がした。

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