僕とE組(大敵と見て恐れず小敵と見て侮らず)

 まあ色々あったけど、今はE組の扉の前にいる。レンは職員室に今更行っても無駄とか言って、案内されたのは結局ここだった。遅れたのは誰の所為だと思ってるんだろうね。因みにここに案内って、優等生が遅れて大丈夫なんだろうか。皮肉を交えて言ってみれば、爽やかにこう返された。

「優等生だからだよ。体調悪かったとか先日から寝不足で、寝坊したとか何とでも理由を付けたら教師共は何も言えないさ。それどころかへこへこと俺に媚び売ろうとするかもね。大丈夫なのか、無理はするな。とかさ。――ああ、編入したてでよく分からない"可哀想な"チェシャに色々説明してたとかでもいいかもな」

 どうやら僕の皮肉は届かなかったようだ。逆に皮肉で返され、僕はぐうの音も出なかった。こういう口での対応は僕の特徴で得意分野であったのだけど、言い返せなかったとは我ながら情けない。
 それにしてもT-Eと書かれてる札があるんだけど、僕って一年なの? 最年少なの? 無理があるよ、Y。それに教室の中凄い五月蠅いんだけど。何なの、祭りでもあってるの?
 朝から色々あって疲れた僕はげんなりと札を見上げ、小さく溜息を吐いた。ああ、アリスに会いたい。若しくは寮管さんやモトヤに癒されたいな。って、駄目だ、今の僕は僕らしくない。いつものようにニヤニヤしないと。僕は何とかいつものニヤニヤ顔を保つとドアを開いた。視線が一気にこっちに集まる。
 不躾に睨んできたり、好奇の視線を全て無視しながら教室内を見渡した。――あ、モトヤとりゅーいちくんがいる。モトヤは目を輝かせて、りゅーいちくんは見るからに嫌そうに顔を顰めて。僕はニヤリと笑って言った。

「熱烈な歓迎有り難う」

 僕に殴りかかってきた銀髪の男の腕を捻りながら。

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