5

 まあそんな感じで俺はカズマに惚れた。家のことをバラしても取り入ろうと媚びてくる奴がいて友達もできないと全て話すと、カズマはホントに家のことを知らなかったようで、その上媚びてくる奴らに最低だ、と怒ってくれた。嬉しくて仕方がなかったぜ。
 それにしても、と時計を横目で見る。あいつと別れて結構な時間が経っていた。先公の所へ行くのにそんなに時間はかからねぇだろ。何やってんだあいつは。そして何で俺はあいつのことを気にしてるんだ! べ、別に心配とかしてねえし。
 訳の分からない自分に苛々していると教室の教卓の方のドアが開いた。やっと来たのかと視線を遣るとそこには担任のホスト野郎しかいなかった。怠そうに教卓まで歩き、出席簿を開いて周りを見渡した。そしていない奴にチェックを入れると髪を掻き上げて声を発した。

「オイ、あいつは」
「あいつぅー? 誰のことだよ?」

 但馬がピアスを揺らしながらホスト野郎に訊く。

「編入生だよ。あー、簪、お前同室だったな」
「きて、な?」
「……お前に訊くのは間違いだったか」

 はあーと深い溜息を吐くと出席簿を肩に乗せてドアまで歩いていく。…こいつ相変わらず適当だな。ホスト野郎はドアを開けるとこっちを振り返って言った。

「来たら俺のとこに来るように言えよ」

 最後にニヤリと笑って今度こそ出て行った。
 あいつ、本当に何やってやがんだ? 橘なら迷うことなんてない筈だ。なら何で来ていない? 気がつけばあいつのことを考えている自分に嫌気がしながら前を見ると、簪が鋭い目を更に鋭くしながら睨んできていた。

[ prev / next ]

しおりを挟む
[back]