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「で、お前何て名前なんだ!?」
「……百緒、百緒隆一だ」
「隆一か! かっけー名前だな! 宜しく!」
「――は?」

 百緒は割と知られているジュエリー店だ。この学園では間違いなく上の方だから幾ら最近転入して来たとしても知らない筈はない。もし少しでも反応したらその瞬間からこいつは敵だ。そう思っていた俺は拍子抜けする。平然を装って取り入ろうとしているのか? しかしこのバカっぽさは嘘を吐いているようには見えない。
 っつーか何だ、名前を褒められると悪い気がしないな。

「お前、百緒を知らないのか?」
「百緒? 知らねえよそんなの!」
「じゃあ何で近づいてきた」
「はあ!? 仲良くなりたかったからに決まってんじゃん! つか俺らもう友達だろ!」

 友達だろ、と胸を張っている姿に鼓動が速くなるを感じた。顔が熱くなる。い、いやいや待て待て待て待て! 俺はホモじゃねえホモじゃねえ!
 そんな俺の心情にそいつは全く気づかず、僅かに見えている口を大きく開けて笑った。

「俺のことはカズマって呼べよな、隆一!」
「……おう」

 カズマ、と心の中で呟けば、胸に温かさが広がった。ああ、俺、ヤバいかも……。
 赤い顔を見られたくなくて少し顔を逸らした。カズマはそんな俺に「人と会話するときは目を見て話さなきゃ駄目だろ!」と口を尖らせて言った。…口しか見えてないのに可愛いとかマッチだろこれ……。いやマッチとか意味不明だろ俺何言ってんだよ。末期だ末期。

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