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 俺はあのとき屋上にいた。屋上は立ち入り禁止とかで人はやって来ないから。来るとしても不良共だが、どっちかというとあいつらは空き教室を溜まり場にしてるからここに来るのは俺だけの可能性が高い。
 コンクリートに腕を枕にして寝そべっていると、振動が伝わってきて俺は目を細める。誰かが階段を上がってきている。数は一人のようだった。俺は警戒心を露わにして起きあがると、ドアを睨んだ。
 ドアが開いた先に見えたのは黒いものだった。

「おー! ここが屋上か!」
「……あ?」

 何だこの黒いの。それが第一印象だった。

「あっ、お前誰だ!?」
「……お前、俺を知らねえのか」
「だって俺今日転入してきたばっかだし! なあ、お前格好いいな! 名前は!? 俺、山根カズマ!」
「…つかてめぇさっさと出てけよ」

 オタクっぽい見た目なのに物怖じせず俺に言い返すのに驚いた。だが、どうせ家のことを知ったら媚びを売ってくるに違いない。俺は山根とかいう奴を睨みながら低い声で言った。

「何でそんなこと言うんだよ!?」
「……ああ?」
「友達になろうぜ!」
「は、」

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