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 物騒なことを言った簪は俺を睨んできた。何だよ、俺何もしてねぇだろうが!

「ねこ、駄目」

 分かってたさ、話にならないことなんてな! お前は口を開けばねこって、うぜえええ。

「ねこ、好き、駄目」

 えーと、要約するとねこ(=あいつ)を好きになるのが駄目ってか。いや俺があんな奴を好きになることねぇから。馬鹿か。
 …そういえばもあいつのあのときの目。
――僕は誰も好きにならないよ。
――特に"人間"は。
 その後冗談だと笑っていたが、あの目は嘘をついているようには見えなかった。人間はというのは一体どういうことなのだろう。……まあ好きにならないということであいつの言う提案に乗った訳なんだが。ってあいつのことはどうでもいいんだよ!
 一つ溜息を吐く。俺は机に頬杖を着いて窓の外を見る。何で空は青いんだろうな。……俺は馬鹿か。いや馬鹿じゃねぇけどな!

「誰があんな奴を好きになるか」
「ねこ、優しい」

 あいつが優しい? ふん、あいつのどこが優しいんだよ。お前もそんなこと言うなんて腑抜けたな。まあ俺にも言えることではあるけど。
 俺はカズマが好きだ。多分初恋。三男で家業を継がない俺に興味がない親には好き勝手しろとある意味見放されて、金髪にピアス、そして族にまで入った俺を周りは軽蔑の眼差しで見た。ここの奴らは俺の家に取り入ろうと媚びて来たりこの見た目で喧嘩は売ってきたりしやがるし、誰も俺を見てくれなかった。友達と呼べる奴だっていない。それでもいいと思った。媚びるだけしか脳がない奴らを友達にしたいとも思わないからな。だからこれからも一人でいると思っていた。
 そんなときだ。――カズマが転入してきたのは。

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