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「ヤオトが?」
「そ、朝俺の部屋に来て言ったんだよ」

 そういえば用事で一緒に行けないというようなことを言っていた。でも、何のために? 確かに一緒にいたら同性愛者に見られると言われたけど、それは僕も見られるという意味だ。Yが僕を好きなだけだったら別に僕が同性愛者ということには繋がらない。それじゃあ最初言っていたことと違う。何か考えがあってのことなんだろうか?

「まっ、チェシャも薄々感づいてるとかもしれないけど、俺って結構な快楽主義者だからさ。はっきり言って詰まらないんだよね、全部。カズマが来てさ、ああ面白いと思ったのも最初だけ。あとは退屈退屈退屈たーいくつの日々。どいつもこいつもバカの一つ覚えみたいにカズマカズマカズマ、本当それしか言えないのかよって感じ。でも最初に近づいたの俺だし、表面はいい奴装ってるから離れられないし。下手に離れたらミイラ取りがミイラになることも考えられる。そんなの只の笑い者だ。だから今こんなんになってるんだけど、誰も俺がこんな性格だって気づいてないんだよな。カズマがさ、人の気持ちには敏感だって言うんだ。いやカズマお前俺が猫被ってるの気づいてないじゃん、馬鹿じゃねーの。副会長は確かに見破ったかもしれないけどさあ、あんなのちょっと見てれば直ぐ分かるから。誰も言わなかったのは空気読んでるからだよ。普通初対面でお前のその作り笑顔気持ち悪いとか言うか? 初対面で愛想笑いは当たり前なのにそれを気持ち悪いって指摘してんだぜ? しかも年上に敬語も使わないで。社会にでてどうするんだっての。会長も殴られて気に入るとかMなの? そんでその後何したと思う? キスだよキス。公衆の面前でキスとか有り得ねえ。キメェよ、ンなもんみせんな。つーかさ、カズマのあれが子供の理論って何で分からないんだろうな。あーあ、馬鹿馬鹿しすぎる。――チェシャ」

 レンは息継ぎもなしにペラペラと喋る(しかも思い切り素で口が悪い)のを一旦止めると、僕に向かってニヤリと意地悪そうに笑った。




「お前何で耳が四つあるわけ?」

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