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 ちょっと待ってくれ。Yが僕のことを好き? どういうことなんだ、そんなことある筈がない。出任せを言うのこと自体は別にいいけど、何でYが出てくる…?
 考えに耽っていると前方から視線を感じた。そのままりゅーいちくんを見ると、お前も大変だなとでもいうような慈悲深い目でこっちを見ていた。…何かちょっと腹立つんだけど。

「まっ、そういうことで少しでも高萩よりも長くいたい俺としては、百緒に邪魔しないで貰いたいわけ」
「レン、僕がりゅーいちくんに職員室まで案内を頼んだんだよ。だから」
「そんなの俺が案内するって」

 当たり前じゃん、と言ってレンはりゅーいちくんを見た。中々しつこいな、レン。僕は作戦について色々話したかったのに。
 りゅーいちくんは少し考えるように視線をさ迷わせて、やがて頷いた。

「じゃあ俺は行く」
「あ、りゅーいちくん。あの提案には、結局乗るよね?」

 背を向けたりゅーいちくんに確かめるように言った。隣でレンがじっと見ているけど、関係ない。
 不良君は一旦足を止めて、振り返るとぶっきらぼうに呟いた。

「――……おう」

 その言葉にニヤリと口を上げた。その後顔を逸らしたりゅーいちくんは、

「だ、だが、俺はまだお前を信じた訳じゃねえからな!」

 と早口に告げて走り去っていった。

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