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「俺のことが一番好きじゃないのか?」
「え?」
「はぁ!?」

 僕とりゅーいちくんはほぼ同時に声を発した。えーと、レンは一体何を言っているんだろう。拗ねたように唇を尖らせ、僕に近づいてきた。

「だって百緒のことを好きとか言うからさ」
「てめえ、もしかしてこいつのこと好きなのか!?」
「いや、ちょっとキミたち…」
「そうだけど?」

 当然だというように答えるレンに、僕とりゅーいちくんは沈黙した。りゅーいちくんは単純に驚いているけど、僕はレンの言葉の裏を考えていた。この短期間で? あんまり話してさえいないのに、僕のことを好きなんて…。一体何を考えているんだろう。僕にとって利となればいいけど、ならないなら……と僕はレンを睨むように見た。こっちを見ていたレンと目が合う。そいつは戯けたようにウインクをし、終いには投げキッスまでしてきた。……ドン引きだ。確かに格好いいし似合うけど凄く気持ち悪い。りゅーいちくんも口を引き攣らせながらレンを見ている。

「まあ詳しくは歩きながら話そうぜ」

 じゃないとチェシャが初っ端遅刻になるしな。という言葉にいつの間にか止まっていた足を再び動かす。

「で、何でこいつのことが好きなんだよ?」
「一目惚れかな。話してもっと好きになったけど」
「…チッ、それだけかよ」

 りゅーいちくん、キミ恋バナが好きな乙女みたいになってるよ。

「それだけで充分だろ。でもな、一つ問題があって。高萩もチェシャが好きなんだよね」
「高萩ィ?」
「昨日チェシャの横にいたサングラスの人だよ」

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