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 りゅーいちくんは僕の笑みを見て己の失態に気づいたのか、ばつが悪そうな顔で舌打ちをした。僕は笑みを深くする。

「さて、そろそろ行かないとね。ところで、職員室知らないかな?」
「……あ?」
「僕、今日からここに通うからさ」

 ああ、と今思い出したように頷くりゅーいちくん。如何にも忘れてたという顔だ。…うん、分かりやすくていいよね。
 りゅーいちくんは再度舌打ちし、荒々しく髪を掻いて背中を向けると、小さく呟いた。

「…着いて来い」

 どうやら案内してくれるらしい。てっきり知るか、とか言って去っていくものだと思っていたから少し驚きだ。いや、その場合は何らかの方法で職員室の場所を聞き出してたろうけど。僕は宜しく、と言うとりゅーいちくんの後に続いた。









「っつか、何で俺なんだよ?」
「ん?」

 あの提案のことってのは明瞭であるけど、僕は不思議な顔をして首を傾げた。少し前を歩いていたりゅーいちくんは苛立ったように振り返る。

「だから、何であの提案とかいうやつに俺を選んだんだよ!?」
「何でって…」

 そんなのに理由って必要なの? と笑みを深めて首を傾げるとりゅーいちくんは驚いたように目を見開き、次いで不信感を露わにした視線で睨んできた。実際、りゅーいちくんを選んだ理由は条件が整っているからなんだよね。カズマを好きで、直ぐ近くにいて、扱いやすそうだから。でもそんなこと言ったら面倒なことになりそうだし言わないけど。ああ、でもこれなら言ってもいいかな?

「強いていうならキミが好きだから、――かな?」

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