僕と娯楽(馬鹿と鋏は使いよう)

 部屋を出ると既にモトヤは準備が出来ているようで、制服に身を包んでソファに座っている。次いで時計を見るとそろそろ部屋を出た方が良さそうな時間になっていた。遅れて行くっていうのも面白そうだけど今日はひとまず普通に行こうかな。少しでも情報は多い方がいいし。
 モトヤは僕に気がつくと耳と尻尾をじっと見つめる。……当然だよね、だってあの格好だけならまだしも制服にこれだからね。でも仕方ないでしょ、体の一部なんだから。
 モトヤは暫くの僕のそれを見ていたけど、小さく首を傾げて不思議な顔をした。この格好のせいでもあるだろうけど流石はEクラス。よく分かってなさそうだ。――でもバカな子ほど可愛いって言うよね。

「ねこ、行く、」

 頷くと何も入っていない鞄を手に取って部屋を出た。
 ドアの開く音が重なって聞こえ、前にいるモトヤの肩がぴくりと動き横を向いた。その瞬間鋭い視線で何かを見据える。

「チッ…何見てんだよ」
「…ない」
「ああ゛?」

 聞き覚えのある声が聞こえてモトヤの横から顔を出すと、りゅーいちくんがいた。その姿を視界に捉えて僕は笑みを深める。ああ、僕は運がいいのかもしれない。背中から顔を覗かせている僕に気づいたりゅーいちくんは目に見えて顔を顰めた。

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