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 ――翌日。
 僕は監視すると言った以上、Yは同じクラスなんだろう思っていた。しかし、Yはあっけらかんと言い放った。

「言い忘れてタけどサ、俺のクラスはSだからナ」

 「は?」不意を突かれて驚いてしまったが仕方ないと思う。監視すると言った奴が、しかも四六時中傍にいると言った奴が、自ら離れた場所にいるように決めるなんて、何を考えているんだ。
 僕は昨日、同室者のモトヤと少し話をして(モトヤはEの頭だそうだ。喧嘩が強いってことなのかな)から風呂に入り、空いている部屋を教えてもらって寝たんだけどやっぱり木の方が寝心地がよかったなぁ。僕にも一応家はあったけど、アリスの家とかヤマネの家とかに行って寝てたから家のベットの寝心地はあんまり覚えてないけど、……まあ、僕の家のベットよりは多分寝心地はよかったと思う。
 朝、六時前にチャイムが鳴ったことで起きた僕は勿論最初は無視した。けど、しつこく鳴らし続ける訪問者に苛ついて仕方なしにドアを開けるとYが立っていて、いきなり冒頭の言葉を言われたっていうわけだ。


「まァ、そういうことで俺は今日用事があるからサ、同室者の奴とでも行けヨ?」

 なるほど、僕がここでの生活を楽しもうとしているのと同じで、Yも楽しもうとしているのかもしれない。それなら互いに深い干渉はなしだ。僕は頷いて、笑みを深めた。

「そうソウ、学校ってやつには制服っていう生徒の証があってダナ、それを着なくちゃならねェんだヨ」

 ほら、と渡された服は見覚えがあった。確かに皆これを着ていた気がする。カズマが恐ろしく似合ってなかったなぁと笑いそうになって、でも僕も似合わない気がして微妙な気分になった。僕が受け取ったのを見て、Yはじゃあなと言って踵を返した。
 そう言えば、尻尾とか耳は本当にこのままでいいのかな? よくないって返されたらそりゃ困るけど、人間にはないものだから不思議に思うだろう。幸い、こすぷれってやつだと思っている人もいるからそれで通さないといけないかもしれない。 僕は踵を返して怠そうに去っていったYの背中を一瞥して部屋へと入った。

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