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 ヤマネの顔を覗き込むようにして言えば、ヤマネはちらりとドアの方を見た。

「まあ…、なんか貰うか。ずっと食べてないからな」
「うん、そうした方がいいよ」

 ね、とアリスに同意を求める。アリスはほっとした顔で頷いた。

「りゅーいちくんたちもそろそろ何か言ってきそうだし、戻ろうか」

 さっきまでぎゃーぎゃー言っているりゅーいちくんの声は聞こえてたけど、もう何も聞こえないし。
 立ち上がってドアの方に向かうと、ヤマネが声をかけてきた。

「……チェシャ、とりあえず今は諦めてやる。でも次は――お前がなんと言おうと、俺は諦めないからな」

 僕は後ろを振り向かずにそっかとだけ返す。ヤマネはもう何も言わなかった。
 ドアを開けると、四つの目がこっちに向く。

「何してたんだよお前ら」

 ぶすくされた顔でりゅーいちくんが話しかけてくる。僕はゆらりと尻尾を揺らせてから、ちょっとねと笑みを浮かべた。

「……ふーん」

 りゅーいちくんはじろりとヤマネを睨んで、小さく呟いた。

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