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ここの寮は一つの部屋に二人で生活するらしい。自室はちゃんとあるらしいけどね。てっきりYと同室だと思っていた僕は、Yが部屋の前で「じゃ、また明日」と手を振ったのを見て目を丸くした。じゃあ僕の同室者はYじゃないのか。

「まァ、何かあったらすぐ知らせロヨ?」
「連絡手段がないんだけど」

 狼煙とか? でも狼煙って部屋の中で上げるわけにはいけないよね。

「オー、そうだそうだ、忘れてたぜェ。これやるヨ」

 「何コレ?」Yがポケットから出した金属の物体を受け取ると、思ったより軽かったのに少し驚く。

「これは携帯電話っていう電話が出来る機械ダ」
「え、こんな小さいので電話が出来るの?」

 ふーん、こんなコンパクトのでねぇ。
でも電話線繋いでいないとできないんじゃないの?
 Yが携帯を開き、使い方を説明しているのを聞きながら僕は電話を眺める。数字と記号が混じった18個のボタンの上に一番大きい四角のボタンがあって、その四角の中にもう一つボタンがあった。Yの説明によると大きい方は十字キー、小さい方は決定キーらしい。Yに連絡するには十字キーの下を押し、アドレス帳というものを開いてYのところ電話決定キーを押す……と。なるほど、これならすぐに使いこなせるだろう。
 今度こそYと別れて部屋に入ると僕は息を吐いた。それは安堵なのかそれ以外なのか――。今のところ一番信頼できるのはYしかいない。それはそうとして、でも隙を見せすぎている気がする。僕らしかぬ行動だ。――まあ、そんなことは今は置いとこう。

「ということで、でておいでよ。ドウシツシャさん?」

 ジョーカーになるのは、――この僕だ。




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