21

 りゅーいちくんとヤマネが睨み合う。りゅーいちくんはヤマネの耳を一瞥した。ヤマネはぴくりと眉を上げる。

「……なんだ」
「いや、まじで本物なんだなと思って」

 「お前みたいなやつがそういうの付けると思えねえしな」りゅーいちくんが鼻で笑う。

「……何だって?」

 訝しげな顔をして、ヤマネの視線が僕に移る。僕はにこりと笑って見せた。

「今教えてもらったんだよ、こいつに」

 りゅーいちくんが得意気に笑って僕を指差す。ヤマネが本当かと目で訊ねてきたので、僕は頷いた。

「別にいいよね?」
「……まあ、別にいいんじゃねえか。それより、アリスがお前のこと呼んでたぞ」
「それよりって」

 「そんな適当でいいのかよ」りゅーいちくんが隣でぼそりと呟く。

「アリスが? 僕がいないから寂しいのかな」

 しょんぼりするアリスを思い浮かべて笑う。モトヤはあんまり喋る人じゃないから、アリスも困っただろうな。

「いや、つーか疲れてたぞ」

 ヤマネもアリスを思い浮かべているのか、苦笑する。

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