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 怒っているというよりは、悩んでいる顔だ。僕は尻尾をゆらゆらとりゅーいちくんに近づける。

「こういうことだってできるんだけど」
「う…」

 りゅーいちくんは唸りながら尻尾を睨みつける。その様子が面白くてニヤニヤと笑っていると、りゅーいちくんは諦めたように溜息を吐いた。

「…分かった。信じる。感触は本物だったしこれは夢でもねえし」

 僕はにんまりと笑う。りゅーいちくんなら、信じてくれると思ってたよ。

「でも、あの金髪の奴は何も生えてなかったけど」
「アリス? アリスは人間だから」
「……普通の人間もいんのか」
「まあね。それに――アリスは元はここの世界の人間だよ」
「……は? じゃあ、行き来が可能っつーことか?」

 「さあね」僕は肩を竦めた。りゅーいちくんが興奮したように僕に顔を近づけた。

「つーことは、俺も行けるかもしれねえってことだよな」
「まあ、もしかしたら行けるのかもしれないけどさ。りゅーいちくん行きたいの?」

 意外な反応だ。小さく首を傾げて訊くと、りゅーいちくんは頷いた。

「行けるなら行ってみてえ」
「ふん、そっか」

 僕は笑みを浮かべる。そうだなあ、りゅーいちくん、それから皆にも見てほしい。僕の、僕たちの世界を。

「気に入るよ、いいところなんだ」

 イカレた奴ばかりだとは口を閉ざして、口角を上げると空を見上げた。

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