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 結局。僕は大した情報も得られず、レンたちの部屋を出た。これ以上あそこにいたとしても、時間の無駄になる。
 それにしても、あれだけ色々言っていたのにあっさりと帰してくれたな。まあ別にいいけどさ。

「さあ、てと」

 僕はふうと息を吐く。面倒だけど、りゅーいちくんを探しに行くかな。どこにいるだろう。すぐに部屋に帰るとは思えない。カズマがいる可能性があるからね。今はきっと誰にも会いたくない状態だろうし――そこらへんを散歩してたら偶然会えたりして。

「とりあえず木に向かお」

 僕は考えるのを止めて、ゆらゆらと歩き出す。ふわりと欠伸を出して、いつもの木へ向かった。





「――あ」

 木の下にいる人間と目が合う。本当に会えるとは思っていなかった。

「や、りゅーいちくん」
「……っ」

 りゅーいちくんは目を見開いて、次いでぐっと眉を顰める。

「さっきぶりだね」
「……なんで」
「なんでここに? 僕が良くここに来ること知ってると思ってたけど」

 りゅーいちくんは黙って俯く。僕は口角を上げてりゅーうちくんに近づいた。

「りゅーいちくん、ちょっと二人で話さない?」




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