15

「あぁ、チェシャ。ヤマネたち――というかヤマネは早く帰した方がいいぞ」

 レンはテーブルの奥に置いてあった籠からクッキーのを取り出すと、かじりついた。さくりと気持ちの良い音が鳴る。

「そうは言っても、僕帰り方知らないんだけど。ヤマネが聞くかも分からないしね」
「お前の言うことなら聞くだろ」
「まあね」

 ん、と渡されたクッキーを受け取り口に含む。ナッツの香りがふわりと口に広がる。

「あと百緒隆一も早くフォローした方がいいと思うけど」

 突然出てきた名前に少しだけ動揺する。僕はじろりとレンを見た。レンは僕の反応を楽しむように口角を上げた。僕は笑みを貼り付ける。

「へえ、そんなことまで知ってるんだ」
「そりゃあ…」
「俺は何でも知ってるから――でしょ」
「そ」
「ま、いいけどね。……りゅーいちくんのことはレンに言われなくてもなんとかするよ」

 僕はもうひとつクッキーを食べると、ぺろりと唇を舐めた。

[ prev / next ]

しおりを挟む
[back]