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「はい、どうぞ」

 レンはドアを開け、僕を促した。足を踏み入れ、周りを見回す。レンの部屋は僕たちの部屋とあまり変わらない造りになっていたけど、なんだか殺風景だ。生活感がないっていうか。ヤマネの部屋もあんまり生活感ないけど、それ以上だなあ。

「あ。そういえばレンの同室者って誰なの?」
「誰だと思う?」

 にっと笑うレンの顔を横目で確認し、靴を脱ぐ。そのまま進んで行って、僕は部屋の中の人物と目が合った。

「――…Y」
「よォ」

 Yはサングラスの奥で目を細めた。

「……実家に帰ったって聞いたけど」
「ここの世界に俺に家なんてねぇからナ。――ま、帰ってたっつーのはあながち間違いないけど」
「へえ、そう」

 立ったままYを見つめていたら、首に腕が回った。

「チェシャ、驚いただろ」
「別に、驚いてはないけど」
「そういうことにしとく」

 けらけらと笑うレンの腕を退かし、僕はYの向かいの椅子に腰かけた。
 驚いたわけじゃない。でも、予想していなかったからちょっと反応に困っただけだ。反応に困っただなんて、絶対この二人には言いたくない。



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