7

「はい、モトヤ」
「……ん」

 僕はティーカップをモトヤに差し出す。モトヤは小さく頷いて受け取った。僕は無言でティーカップを傾ける。アリスもモトヤも口を開かない。

「……ええと、さっきもチェシャから紹介されたけど、私アリスっていいます」

 ちらりとアリスを一瞥したモトヤは、再び頷いた。

「モトヤだよ」
「……簪基哉」
「チェシャと同じ部屋なんだよね」

 アリスが頑張ってモトヤに話しかける。でもモトヤの反応が薄いからか、困ったように僕に視線を向けてくる。当然僕は見て見ぬフリした。

「……紅茶飲んだら、僕外行ってくるね」
「え……っ」

 アリスが顔を強張らせる。置いていかないでと顔に書かれていて、僕はにこりと笑いを貼り付ける。

「僕ちょっと用事あるからさ。ヤマネのこと、宜しくね」
「え、ええ……うん」
「モトヤも」
「わ…かった」

 モトヤは浮かない顔をしている。僕は紅茶を口に含んだ。さっきのりゅーいちくんとの話を聞いていただろうけど、何も言ってこない。いつもならつまらないなと思うところだけど、あんまり話したくないから、ちょっとだけ助かってる。
 僕は笑みを浮かべてモトヤの頭を撫でた。モトヤは目を伏せて黙って撫でられている。


[ prev / next ]

しおりを挟む
[back]