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「はい、モトヤ」
「……ん」
僕はティーカップをモトヤに差し出す。モトヤは小さく頷いて受け取った。僕は無言でティーカップを傾ける。アリスもモトヤも口を開かない。
「……ええと、さっきもチェシャから紹介されたけど、私アリスっていいます」
ちらりとアリスを一瞥したモトヤは、再び頷いた。
「モトヤだよ」
「……簪基哉」
「チェシャと同じ部屋なんだよね」
アリスが頑張ってモトヤに話しかける。でもモトヤの反応が薄いからか、困ったように僕に視線を向けてくる。当然僕は見て見ぬフリした。
「……紅茶飲んだら、僕外行ってくるね」
「え……っ」
アリスが顔を強張らせる。置いていかないでと顔に書かれていて、僕はにこりと笑いを貼り付ける。
「僕ちょっと用事あるからさ。ヤマネのこと、宜しくね」
「え、ええ……うん」
「モトヤも」
「わ…かった」
モトヤは浮かない顔をしている。僕は紅茶を口に含んだ。さっきのりゅーいちくんとの話を聞いていただろうけど、何も言ってこない。いつもならつまらないなと思うところだけど、あんまり話したくないから、ちょっとだけ助かってる。
僕は笑みを浮かべてモトヤの頭を撫でた。モトヤは目を伏せて黙って撫でられている。
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