▼ 6
アリスは眉を下げた。
「あの…会長さんには私たちのこと、話してたよね。どうして彼には何も話さないの?」
「アリスは話してほしいの?」
「そんな、私は別に…」
「ほしいんだ」
「……ほんとに、そういうわけじゃなくて」
困ったように口から言葉を吐き出して、躊躇したように視線を動かした。そうしてアリスは、最後に目を伏せて少しだけ笑った。
「チェシャらしくないなって、思って」
「そうかな?」
「そうだよ」
僕はアリスに近寄った。さらりとした金の糸を持ち上げれば、アリスはくすぐったそうに身を捩った。
「私、ちょっと寂しかったんだ」
「チェシャがチェシャらしくなくて」アリスは付け加えた。
「アリス、今日はやけに素直だね」
「チェシャが素直じゃないから」
僕はにやりと笑って見せた。
「ねえ、アリス、紅茶を淹れようか」
僕はくるりと体を翻した。視線が――二つ、背中に突き刺さる。一つは責めるような、もう一つは縋るような。
「モトヤも要るよね」
ゆらりと尻尾が揺れる。
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