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「お前ら! 友達にそんなこと言うなんて駄目だぞ!」

 ――っ。カズマの頭に響く声で僕は思考の渦から我に返った。危なかったと安堵の溜息を吐く。
 っていうか友達? え、誰と誰が?

「えー、だって俺らダチじゃないしー」
「そうですよ、誰がこんな不審者と」
「でもチェシャは俺の親友なんだぞ! ならお前らも友達だろ!」

 ……カズマの考えていることは僕の理解範囲を超えている気がするよ。親友ねえ。僕は親友なんて要らないんだけど。っていうかカズマと会ったの今日だよね? しかもちょっとしか話してないよね? 親友って一瞬でなれるものじゃないでしょ。そして何でこの人たちも友達って決めてるのさ? これイカレコンビに負けない横暴さだよ。いくら娯楽好きな僕でもここまでいくとちょっと引くよ。

「チッ、テメェ何がしてェんだ。そんな格好して気でも引こうと思ったのか?」

 金髪の人が憎々しげに舌打ちして言葉を放つ。あれ、同じような言葉をさっきも聞いた気がする。

「何とか言えよ!」
「いや、あのさ――」
「なあ、チェシャ! お前なに食べてるんだ!?」

 カズマは空気を読めないの? それとも敢えて読んでないの? 僕は明らかにどうでもいいことを言っているカズマに言う気を削がれて溜息を吐いた。これはイカレコンビと同じくらい厄介だよね。

「おい、カズマ!」
「おーいたいた」

 再び食堂が嬌声に響いて、入り口を見るとりゅーいちくんと爽やかそうな黒髪短髪の男(心なしか周りが輝いている気がする)がこっちに向かって歩いてきていた。
 「あっ、テメェは!」僕に気づいたりゅーいちくんは今にも殴りかかってきそうな顔で僕を睨む。隣の爽やかくんは一瞬僕の格好を驚いたように見て首を傾げた。

「お? 誰?」
「テメェまたカズマに近付いてやが――」
「なあ百緒、あいつ誰?」
「今度近づきやがったら」
「なあ」
「うっせーよ橘! さっきから人の話遮るな!」

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