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「さて、と」
僕は振り返った。なんだか深刻な顔をして僕を見つめているりゅーいちくんに笑みを貼り付ける。
「りゅーいちくんは、何が訊きたいのかな」
「…っお前は」
「うん」
僕はちらりとアリスを見る。アリスは僕と目が合うと、不安そうに顔を俯かせた。
「お前は……いや、お前らは、何者なんだ」
りゅーいちくんは震える声で僕に投げかけた。首を傾げて見せる。
「何者だと思う?」
「おい、俺は真剣に…」
「僕は普通のニンゲンだよ。それで満足?」
ドン、と鈍い音が響く。見ると、りゅーいちくんが壁に拳を当てていた。ああ、壁を殴ったわけね。痛そうだなと思いながらぎりぎりと力強く握られ震えている拳を眺める。視界の端ではアリスが怯えていた。
「アリスを怖がらせるのはやめてほしいな」
ぎろりとりゅーいちくんの鋭い目が僕を睨みつける。く、と笑みが零れた。
「久しぶりだな、りゅーいちくんがそういう目を僕に向けてくるの」
「俺は真剣に訊いてんだ…、お前も、ちゃんと答えてくれ」
じゃねえと、と消えそうな声が耳に入る。じゃないと、何? 僕は目を細めて笑みを作った。
「――アリス、お茶でも飲む?」
「……え」
アリスに声をかければ、二人の目が見開かれる。りゅーいちくんは舌打ちをすると、走って玄関に向かった。そしてその直後、ばたんと大きな音が鳴る。
「…チェシャ」
アリスの控えめで、でも咎める声が部屋に落とされた。
「傷ついた顔してたよ」
「うん」
「今のは、酷いよ」
「……うん」
僕は気まずくなって、首の裏を掻いた。
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