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俺はヤマネの後を追った。何となく、追った方がいい気がした。猫野郎とアリスの視線を感じたが、特に何も言ってこないのでそのまま出てくると、ヤマネは壁に手を付いていた。
「…おい?」
肩で息をし、その場から動こうとしない。何だか様子がおかしい。不審に思って声をかけると、ヤマネがゆっくり振り返った。俺はぎょっとする。酷い顔色だ。それに、汗も掻いている。さっきまでそんなに体調が悪そうに見えなかったのに。
「…何だよ」
「何だよって、それよりお前――」
「空気が合わないだけだ」
最後まで言い切らない内に、ヤマネが吐き捨てるように言った。
「クソ、やっぱりここに長居はできねえみたいだな…」
ヤマネは一人で納得しているが、俺はさっぱり分からない。ヤマネも説明する気はないだろう。訊いても無駄なことは分かったが、訊かずにはいられなかった。
「どういうことだよ。空気が合わないって何だ」
ヤマネは怠そうな顔で俺を一瞥する。案の定、答えはなかった。更に、俺に背を向けて壁に手を付いたままどこかへ行こうとする。
「おい! ちょっと待てよ!」
そんなに体調が悪そうなのに、どこへ行くというのか。保健室か? でも保健室の場所を知ってるのか、こいつ。
慌てて声をかけて肩を掴み、無理矢理こっちを向かせた。
「……んだよ」
さっきより不機嫌そうだ。ぎろりと睨まれ、一瞬だけ怯む。
「部屋で休んだ方がいいんじゃねえの」
「余計なお世話だ。俺はやることがある。邪魔すんな」
「やること? この学園の生徒でもねえのに、何をするんだよ」
「テメェには関係ないだろ」
確かに関係ないかもしれないが、フラフラしてて今にも倒れそうな奴を放っておけない。…あいつの大切な奴だし。
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