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 あいつが戻ってきたのはそれから暫く経ってからだった。食堂に来た二人組も一緒にいる。連れてきたらしい。にやにやと笑いやがって。じろりと睨むと、奴は手を上げた。

「やあ」
「やあ、じゃねーよ! 置いて行きやがって!」
「ああ、ごめんね? 寂しかった?」

 からかいの混じった言葉にかっと顔が熱くなる。俺は少し上擦った声で言った。

「さっ…寂しくなんかねーよ!」
「さ、みし、か…た」

 そんな俺の横で眉をハの字にしてあいつを見つめる簪。そして簪の頭を撫でるあいつ。…簪の野郎。俺はむっとしながらそれを見る。すると、猫野郎がこっちを向いて意味ありげに笑う。心の内を見透かされているようだ。

「おい、チェシャ」

 猫野郎と同じように耳のある男が痺れを切らしたように声をかけあいつの肩に手を置いた。俺は改めて男を見た。あいつと同じコスプレ野郎ではあるが、それを除けば俺や簪のような部類の奴だ。

「――さて。こっちがヤマネで、こっちがアリスだよ」

 猫野郎が俺たちに二人の紹介をする。……ヤマネ、と俺は呟く。あいつの大切な奴…。
胸が痛い。眉を顰めていると、俺たちの紹介もされた。友達、と。……友達と思われているのは微妙な心境だ。それ以上になることはないのかと苦しくなる。
 奴らは、…特にヤマネという奴は俺たちに興味がなさそうだった。猫野郎に見せる顔と、俺たちに向けられる顔は全く違う。

「で、なんでここにいるんだよ」
「モトヤは僕の同室者なんだ」

 ふうん、とヤマネが相槌を打つ。そしてちらりと俺を見た。お前は何でここにいるんだと言いたげな顔だ。俺は睨み返す。

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