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モトヤとりゅーいちくんがむっすりとした顔で僕たちを迎えた。りゅーいちくんも来てたんだ。最近この二人の組み合わせ多いなあ。
「やあ」
「やあ、じゃねーよ! 置いて行きやがって!」
「ああ、ごめんね? 寂しかった?」
「さっ…寂しくなんかねーよ!」
「さ、みし、か…た」
モトヤがしゅんとする。モトヤは素直だなあ。それに比べてりゅーいちくんたら。よしよしとモトヤの頭を撫でていると、りゅーいちくんがじっと見つめてくる。撫でて欲しいのかな、ニヤニヤしちゃうね。
「おい、チェシャ」
僕の後ろで待っていたヤマネが痺れを切らしたように僕の肩を掴んだ。そういえばまだ玄関だったと思って、部屋に上がる。ヤマネたちに靴はちゃんと脱ぐように伝えた。帽子屋の時は言い忘れちゃって、大変なことになったからね。僕って、ほら、綺麗好きだからさ。べたべた靴の跡がついて発狂しそうだったよ。嘘だけど。
ワンダーランドでは靴を脱ぐ習慣なんてなかったから最初は戸惑ったけど、今では靴のまま上がることに抵抗ができてしまった。ワンダーランドに戻ったら、抵抗はなくなるかもしれないけど。
「――さて」
僕はヤマネとアリスの間に座って、にや、と笑う。「こっちがヤマネで、こっちがアリスだよ」
「……ヤマネ」
りゅーいちくんの声が強ばった。ああ、そういえばヤマネの話をしたことがあったっけ。
「それで、りゅーいちくんとモトヤ。二人とも、僕の友達だよ」
その言葉にモトヤは嬉しそうにして、りゅーいちくんはどこか不満そうだった。友達以上になりたいんだろうなあって思うけど、僕にはそんな気ないから。ごめんねとこっそり笑う。
「…ふうん」
「ど、どうも」
ヤマネの興味なさそうな声と、アリスの可愛らしい小さな声。
「で、なんでここにいるんだよ」
「モトヤは僕の同室者なんだ」
言いながら、りゅーいちくんとモトヤ、それにヤマネとアリスが同室だったら楽しそうだなあと思った。あ、会長さんもいたらいいね。
――でも。ハートのトランプは空気が合わないって言っていた。イカレ帽子屋は辛そうだった。……だから、きっとヤマネたちも…。
僕は少しだけ悲しくなった。
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