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「……何を言ってるんです」
……何を言っているか、か。仕事をすると言っているのに。予想通りの返事ではあったけれど、それと同時にショックだった。誰より仕事に真面目に取り組んでいたのに、今ではこの有様だ。まるで人が変わったようで、恋の恐ろしさを改めて実感する。
「…水星様はご存知でしょうか。会計が仕事をし始めたのを」
「知っていますよ。意外でしたが、カズマを独占できて気持ちがいいです」
にこりと笑われ、僕は凄まじい虚無感に襲われた。僕が何を言っても無駄ではないかと水星様を見つめた。
「…僕は、あなたがそこまで頭が悪いと思っていませんでした」
「……なんですって?」
びしりと笑顔が固まった。威圧されながら、僕は言葉を発し続ける。
「何もかも捨てる覚悟があるというのでしたら、僕は何も言いません。ですが、少なからず捨てたくないという気持ちがあるのでしたら、戻ってきてください」
水星様の瞳が微かに揺れた。
「……僕は戻ります。山根くんのことはご自分でどうにかなさってください」
「っあなたの分際で僕に逆らうということですか?」
「そうです」
きっぱりと言うと、水星様がたじろぐ。僕はさっと頭を下げて、踵を返した。
「ちょ、ちょっと」
後ろから混乱したような声がした。今までこんなことがなかったからだろうか。
水星様に見捨てられるかもしれないという不安やおそれはまだある。しかし、後悔はしていなかった。
少しだけスッキリとしながら、僕は廊下を歩いて行く。目的地は、暫く足を運んでいない、生徒会室だ。
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