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もう教室に戻ろうかなと思っていたら、書記さんがぼそりと呟く。
「……僕は、怖いんだ」
「怖い?」
「ただでさえ嫌われているのに、これ以上嫌われたら…どうすればいいんだ」
「副会長さんが好きなんだね」
「……。…言っただろう、妾の子だと…。水星様は僕の弟だ」
書記さんは自嘲する。この様子を見ると、副会長さんのことはそこまで好いていないみたいだ。いや…それとも、嫌われているから、こんな顔してるのかな。どっちなんだろう…ま。別にどっちでもいいけど。
そういえば副会長さんは美人だけど、書記さんはクールな感じだね。言われなかったら兄弟って分からないな。
「嫌われたら嫌われた時だよ」
「なっ、」
「ていうかもう嫌われてるなら別にいいんじゃない? いくら嫌われようと」
言葉を失ったように僕を見上げる書記さんに、にんまりと笑ってみせた。
「まずやってみなよ。それでどうしても無理だったら――僕のところに来れば? 僕、リコールってやつ、大嫌いなんだよね。だからリコールなんて、見たくないんだ」
「え…」
やってくれるのか。そう言いたげな顔だ。僕は肩を竦める。
「どうしても無理だったらだからね」
「ああ…しかし、どうしたら」
ええ? それくらい自分で考えてくれないかなあ。だけどこれで無理だったからやっぱり頼むとか言われても面倒だしね。でも……うーん、何がいいのかなあ?
「副会長さんの命令に背いたことって、ないんだよね?」
「ああ…」
「じゃあまず、命令に背いてみたら?」
これでまたそんなことできないとか言われたら呆れてたけど、書記さんは静かに立ち上がって、しっかりと頷いた。
命令に背いたことのない男が初めて主人に逆らう――。それって、凄く面白いよねえ。副会長さん、どんな顔するんだろう。僕も見てみたいなあ。
くすりと笑った僕を見て、書記さんは首を傾げた。
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