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「お、来やがったな」

 鐘が鳴った後入ってきたヤカタニは、僕を見るとにやりと笑った。僕はそれに応えるようににいっと笑った。

「聞いたぞ、お前があの会計を更生させたっつってな」
「えっ何それ?」

 マサキが僕を振り返った。クラス中の視線が僕に突き刺さる。りゅーいちくんは鋭い目を丸くさせて僕を見ていた。モトヤは無表情だ。
 というか僕もそれは初耳なんだけど。会計さんには嫌われているし、言葉も拒絶していたのに。それでも仕事を始めたのは会長さんがうまいこと言って連れ戻したんだろうと思っていたけど、ふうん、そうだったんだ。で、ヤカタニはなんで知っているんだろう。
 ちなみに僕にその情報を与えたりゅーいちくんだ。あの顔を見る限り知らなかったんだろうね。

「確かにあの会計が急に仕事し始めたとか聞いたけど、猫クンが……?」
「ソースは保険医の小林と会計だから確かだぜ」
「保険医と会計は人間だろ…? 大丈夫か、ヤカタニ…」

 残念な物を見るような目でヤカタニを見るマツムラ。ヤカタニはちらりと一瞥して言った。

「黙っとけ森山」
「俺松村!」

 ソース…? と周りの人も首を傾げている。ヤカタニは呆れた顔でその人たちを見回した。そして再度僕に視線を移す。

「結構きついこと言ってやったみてえじゃねえか」
「猫クン笑顔でさらっと酷いこと言うもんねえ」
「ええ? そんなことないけどなあ」
「いや、あるだろ」

 さりげなくりゅーいちくんが口を挟んできた。僕は酷いなあと笑ってみせる。りゅーいちくんが溜息を吐いた。

「で、そのことでな。書記が話があるんだと」
「……しょき?」

 何それ。誰?

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