▼ 俺とクソネコ(沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり)
(side:煕)
にやりと気味の悪い笑みを残して、猫野郎は去って行った。俺は胸糞悪い思いで布団をぎゅっと握り締める。
近くで溜息を吐く音がして、そっちを見る。……会長、まだいたんだぁ。
「……なんなのあいつ」
「さあな」
肩を竦める会長は、何となく機嫌が良さそうだ。俺はムッとして会長を睨みつける。俺があんなにボロクソ言われたのに!
「さあなって、会長あいつと仲いいんでしょ」
「はあ? 良くねえよ」
「嘘だ! だって…!」
「あいつは…まあ目は離せないがな。それは問題起こすからであって、別にあいつが気になるわけじゃねえよ」
「じゃあなんでそんなに嬉しそうなんだよ」
「嬉しそう…? 俺が?」
会長は眉を顰め、口元に手を遣る。数秒もごもごと口を動かして、結局そうかもしれないなと言った。ほら、とムカムカしながら呟く。あの厭味な顔を思い出して更に苛立った。
「俺は…今のお前よりは、あいつの方が好きだ」
「……ふーん」
「あいつの言ったことちゃんと考えろよ。お前、本当にリコールされていいと思ってるか?」
ずしりと胸が重くなる。あいつの言っていることは……大袈裟だったけど、でも、そうかもしれない。俺は仕事してないんだから、リコールされてもおかしくない。確かに生徒会なんて別になりたくてなったわけじゃない。だけど、生徒会が全て苦痛だったわけじゃない。仕事が楽しいって感じる時もあった。
カズマが来てから…皆、カズマに夢中になって。俺も、って仕事を放りだして――あれ? 俺はカズマのどこに惹かれたんだっけ? 気がついたらカズマにべったりだったような…。
「……そういえばカズマ…」
「カズマ? …遊んでるんだろ、琉生たちと」
来ないからおかしいと思ってたら…ふーん…遊んでるんだ。俺が蹴られたところ、見てたはずなのにな。
俺はちらりと会長を見る。…さっきも思ったけど酷い顔だ。きついんだろうな、ってのがすぐに分かる。……そうさせたのは、俺ら、なんだ。俺たちが仕事しないから。
「…つーか、あいつも出て行ったし、俺も行くわ。じゃあな」
そう言って会長は俺の方を一度も見ずに、出て行ってしまった。
リコールとカズマ。どっちを手放すのが惜しいか――わかってるんだろ? 警告めいたその声が、脳内で聞こえた気がした――。
[ prev / next ]
しおりを挟む
[back]