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 唖然とした顔で僕を見上げる会計さんは、ぽつりと零す。

「死って、………大袈裟だろ」
「そうだね、君にとってはそうかもしれない。でも、そう思っている人もいるんだよ。僕は別に君がどうなってもいいんだけどさ、会長さんが可哀想だなと思って」

 ねえ? と会長さんを見ると、不満そうな顔をしていた。あら。僕が可哀想だと思ってないことバレちゃってるみたいだね。

「……可哀想? なに、お前会長が好きなわけー?」
「何言ってんだよお前は」

 呆れたように溜息を吐くのを横目に見ながら、僕はにいっと笑う。

「うん。好きだけど」
「は!?」
「…あ、そ。大変だねえ会長。こんなキチガイに好かれちゃってさあ」
「うん、本当にね。こんな頭の悪い茶髪の世話しなきゃいけないなんて──本当、大変だ」
「はぁ!? 喧嘩売ってんのかよ!?」

 会計さんが僕をぎろりと睨む。今にも飛びかかってきそうだ。イカレ帽子屋がどれだけイカレていても、三月ウサギがどれだけ自分勝手でも、ここまでバカじゃない。これで仕事をせずにいたらリコールか。リコールなんて胸糞悪いもの見たくないけど、もういいや。どうなっても知らない。

「まあ、言いたいことはそれだけだよ。後悔しない選択肢を選べるといいね」

 さようなら、お馬鹿な会計さん。

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